演題:映画か?テレビか?どっちもか? 〜芸能記者の取材ファイルより
2009年1月16日 講師:細田正和氏 於:金蘭会館
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遠路はるばる、と言ってもよかろう。
我が友細田氏が先輩方の前で披露する「セミナー」。
そらもう、聴きに行かねば。というので新幹線に乗って大阪に向かった。
早めに着いたつもりの会場は母校金蘭会館の2階。
正門から入ったものの、様変わりした校舎…
まずどうやって入れば良いのか事務の方に尋ねる始末。
在校生が行き交う中を歩くのもまた、やや気恥ずかし。
受付では金蘭会理事の若手の方々がお世話をつとめておられる。
名札をもらって会場に入り、なんとか席を確保。
というのも、受講の方々は百名を越えるほどの数で、
あまり広くない会場はぎっしり詰まっていたのである。
年齢層は…うーん、「大先輩」と言っても差し支えあるまい。
特に「かぶりつき」にお座りの熱心な方々は、大先輩ばかりとお見受けした。
まずその熱気に驚く。
お世話される理事の皆様も、ごくろうさまです。
さていよいよセミナーの開始。
東京本社での勤務も長いはずの細田氏だが、なつかしい大阪弁は全然変わらない。
どちらかと言うと「文芸畑」の細田氏だが、
芸能記者時代の経験を交えて「テレビ」と「映画」についてどんどん語っていく。
…話、うまいねぇ、細田氏。
テレビ取材の話題を聴いていて、まだほんの10年ほどしか経っていないのに
「ものすごく昔のこと」を聴いているような感覚になった。
「TBS事件」「キムタクブレイク」「ポケモンパニック」…どうです?
やたら「隔世の感」ありませんか。
それだけ世の中の回転が速いのだ。今やついていけてないが。
同時に、単なる流行りモノ、と思って受け流しているつもりの「流れ」に
どっぷりはまっている自分に気づく。
映画ではやはり「取材記者がうらやましい」。
…ってそんなお気楽な話ではないよなぁ。
とは言え、アカデミー賞取材のプレス・パスはうらやましいぞ。
会場の受講生各位も回覧しておられた。
と言うか、回覧を「要求」されたと言ってもいい。
なんでかは不明だが大変ありがたいものに見えるのだ。
我々の興味をそらさぬよう、華やかかつ身近なエピソードを中心に
細田氏は語っていたが、そこはさすがに文化部部長で、
きちんと「文化の流れ」を押さえて「筋」を見せる。
サブカルチャーであったマンガやアニメが主流となる流れを、
具体的に聞かせてもらった気がする。
スターはアイドルから今やほとんど隣の誰かさんへと、
大衆と<芸術>を隔てる壁はどんどん薄くなり、「観る場」も劇場から映画館へ、
そしてテレビからさらにネットへ。なるほどなぁ。
そのことを細田氏自身がどう思っているのかは、語られなかったが。
聞いてみたかったな。
このあたりを語るころ、それまでパワーポイント画面で説明していた細田氏は
いきなり側にあったホワイトボードに書き出した。
・・・・・・! やっぱり出たか、手書き人間。
今や記事も原稿も手書きすることはないそうだが、
いつもどこでもペンを取り出してなにやら書き付ける彼の癖を思い出して
僕はひとりニヤニヤしていた。
変わらないねぇ、細田氏。そういうところが、僕は好きだよ。
一時間というセミナーの時間をきっちり使い切って、
質疑応答がありセミナーは終了。
「楽しいお話」を聞かせてもらったが、一方で僕は少し考え込んでしまった。
漫然とテレビを眺め、マンガを漁り、流行の映画を観て本を読み捨てる。
そういう行動の中にも、日々文化は蓄積されているのだ、恐ろしいことに。
眠るがごとき日常を送る自分を叱咤せねばと思った次第である。
…それはともかく、セミナーは終わった。さて、二次会に行こうぜ!
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細田氏の著書を読んでみませんか。
「テレビのお約束」 共同通信社刊 1998年
「転生する風土」 共同通信社刊(共著)1997年
「ニッポンの現場検証」 洋泉社刊 1993年
他にペンネームでこのような本もあります。
「映画なんでもランキング」
彩流社刊オフサイドブックス(磯野テツ名にて共著)2006年
「プロ野球『毎日が名勝負』読本」
彩流社刊オフサイドブックス(磯野テツ名にて共著)2001年
磯野テツ、というのは細田氏のペンネームで、
ご本人曰く「本業と無関係なところ」で使っておられるそうです。
謙虚な彼が「恥ずかしい」というのをあえて載せました。
いずれも入手可能です。ぜひ!
セミナーについて詳しくはこちらも→WEB金蘭会
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