大阪府立大手前高校昭和50年卒同窓会     学年新聞vol_20  
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vol_20_01    わたしたちの新幹線課  3-7 小林 一則 


「わたしたちの新幹線課」という課がある。JRかイベント会社、玩具メーカーならわからないでもないが、佐賀県の武雄市役所の中なのだ。
 当地では、博多と鹿児島を結ぶ九州新幹線が鳥栖(佐賀)から長崎方面へ分かれ、西九州ルートとして整備が進められている。武雄市にも駅ができ、新幹線を活かしたまちづくりを図ろうと作った課だそうだ。
 武雄に限らず、沿線どこも地域振興、活性化のはずみにと躍起だろう。さしずめ新幹線対策室なら普通だが、「わたしたちの新幹線課」とはまた大胆な。
 「市民と一緒に考えるのに、垣根を低くしたいと思いまして」と北川政次課長。課の名前を聞いて冗談かと思い、名刺を見てギョッ。そんな人も少なくないそうだ。「恐らく日本でただ1人の課長ですからね。武雄のいい宣伝にもなりますよ」

武雄市観光協会  新幹線課だけではない。この市役所には、「佐賀のがばいばあちゃん課」というのもある。佐賀を舞台にしたタレント島田洋七さんのベストセラー自伝小説。そのテレビドラマ化にあたり、ロケ地の誘致に市を挙げて取り組み、それが高じて課まで作っちゃった。
 <--武雄市観光協会のページにリンクしています

 誘致の旗振り役は、3年前に就任の樋渡啓祐市長(39)。地元・武雄高を出て東大に進み、総務省大臣官房秘書課長補佐から転身のエリート市長だが、お堅いイメージはとんとない。誘致の役目を終えたので廃止しようとしたら市民から「ぜひ残して」と嘆願書。今年は第2弾のドラマのロケも行われ、市民もエキストラ出演などで大いに盛り上げた。

いのしし課看板  武雄市役所にお目見えした「いのしし課」、左は樋渡市長-->
 ほかに、農産物に被害をもたらす猪を商品と見た「いのしし課」、特産のハーブを売り込む「レモングラス課」。いのしし課長が麗しい女性で、レモングラス課長が熊のような九州男児だったら面白いだろうなあ。
 これらはいずれも「営業部」の所属。普通なら商工部か産業部だろうが"株式会社武雄市役所"ならではか。さらに、健康課の中に「たっしゃか(達者か)係」、観光課に「九州物語係」、食育課に「楽しい食卓係」。ほんとに変わった市役所だと思うが、市民課、下水道課、農林商工課と当たり前の課も当たり前のようにある。
 自治体の面白組織の嚆矢は、千葉県松戸市の「すぐやる課」。改廃されることなくこの10月で丸40年を迎える。蜂の巣の駆除や側溝のふたの修理など昨年度は3676件の出動があったという。この課のアイデアは、就任早々の故・松本清市長。今や関西でもよく目にする薬局チェーン「マツモトキヨシ」の創業者だ。
 お役所仕事というのは、融通が利かないだの効率が悪いだの堅苦しいだの。とかく良くないイメージを抱きがちだったが、改めねばなるまい。


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