私は朱蘭会に何の関わりもないものである。
だがしかし。「大奥」。ああ、なんて魅力的なコトバ。
しかも「将軍様」不在。
そこには熟女が満ち溢れ、インビな世界が繰り広げられているに違いないのだ。
「ぜひどうぞ」…明らかに社交辞令であるに違いないこのセリフに乗じて、
夏の盛りのとある日、私は女装して「大奥」に向かった。
駅を降り立ち風情ある小道を抜けたそこは、目立たないが清潔感溢れる一軒家であった。
おお、出迎えてくれるのは「ないすばでぃ」な女主人。
朱蘭会大奥の主(ヌシ、と読んではいけない。あるじ、である)でもある彼女は、客席を美しくしつらえて待っておられた。
…というわけで、非常に満足して私は夕暮れの中、熟女たちと帰途についたのであった。
えっ? それだけかい、って? いやだって、大奥だし。
ヒミツでインビで男子禁制なんだし。
はぁ、それでは「潜入記」にならんと。
じゃあまぁ付け加えるが、ご出席の方々は皆様たいへん美しく機知に富み、かつ飲みかつ食べ、持ち寄った大量の食料は順調に皆様の胃の腑の中へと移動したのであった。食べるのと喋るのと、同時にあれだけの量をこなすのはなかなかに難しい。
もちろん、私は人一倍食った。
話題はあちらへ飛びこちらへ転がり、いやもう、昔の色事から今の趣味に至るまで、サカナにならなかったモノはないと言えよう。殿方は、話題に上らぬように用心召されるがよろしかろう。
もう、なんもかも「ぶっちゃけ」やし。
そうそう、主(あるじです、あるじ)お手ずから調理された「炊き込み飯」と「あつもの」がまことにまことに美味であったことも付け加えておく。
「大奥」は実に楽しいところであった。
また次の機会にも乱入したし。しかしそのときは、笑いジワが増える覚悟が要る。
そして思った、「オンナ」はいつだって「おんなのこ」に戻れる。
そこでは、「そこにいない殿」はこれまたいつだって、「夢の王子様」なんである。
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