温泉。行きたい、行きたい。
鍋。てっちり、カニ、しゃぶしゃぶ、すき焼き。舌は肥えてしまって少々のものでは、フンというところだが、クエ、となるとぐいっと乗り出す。
いつものように同窓の気のおけない連中で杯を傾けてわいわいやっていうるうちに、どこでどう話が進んだのか、温泉に入ってクエを食すツアーが出来上がっていた。
目指すはクエの本場和歌山。大阪でもクエなくはないが、"本場直送"ならちとお高くなりそうだし、冷凍ものならちょっと・・・。それに温泉を付けるのだから、大阪では無理無理。
大枚振るえば何でも来いだが、中枚も振るえず、小枚ヒラヒラなので、私(小林)の勤め先の保養所で形だけの目的達成をすることに。白浜の温泉で、クエ鍋の夕食が幾分か安く用意できる次第だ。
俺も、私も、と手が挙がったが泊りがけとなるとなかなか日程調整がつかず、取り合えず行ける者だけと06年2月の土日に決行した。
参加は男女8人。同じクラスになったことないのに知らんやん。というはずなのに何故か旧知のごとくまったく違和感なし。ほどよく4・4になって、自然とペアになって、アバンチュールが、焼けぼっくいに火が、火が、火が、あぁ〜なりませぬ〜〜せぬ〜。
とはなりませぬような面子でしたので悪しからず。残念!
たかが白浜ごときで決行でもあるまいが、日を決めてから、ついでにどこ行く? あそこ行きたい、あそこしょうむない、ほんならあんた行かんとき、こっちも行きたい、そんな遠いとこ行けるかあ。あれ食べたい、あれまずい、ほんならこれ、それ俺嫌い、どないせえ言うねん。
共通メールでこんなやり取りを重ねてやっとのことで決めた"なりませぬ行"なので決行と呼ぶにふさわしいのかも。
殿方の車3台で南へ南へ。和歌山は和歌山ラーメンしょっ、とまずは腹ごしらえから。行列のできる井出商店で並んで待つこと20分。繁盛して儲かってるはずなのに古ぼけた狭苦しい店内で安っぽい丸椅子に腰掛けて、身を寄せ合うようにして食べる麺。グルメリポーターなら、この麺の腰、あっさりこってりの醤油とんこつのハーモニーが何とも・・というところだが、当チームはクエが期するところなので、「きょうはこれぐらいにしといたろ」。
続いて南部の梅林。ひと目百万本香り十里との触れ込み。2月半ばでちと早かったようだが、それでもサービス精神旺盛の花がポツリポツリ。かぐわしい香りも控えめに漂って雰囲気は上々。それはそれでよかったんだが、お坊ちゃまお嬢ちゃまが沿道の店を冷やかしながら試食しながら、早くも買い込んだ土産を両手に提げながら、大口開けてケタケタ、ゲラゲラ。2次会へ向かう一行のよう。案の定、はぐれ者が出てきて、「あんたどこにおんの」。携帯は便利だ。
テンションが上がったまま、保養所へ。温泉にザブンとつかって、待ちかねたぞクエ鍋。卓上には分厚い切り身が。薄造りでなくてよかった。昆布が鍋の中で泳ぎだして切り身も温浴へ。鍋のふたで遮られたしばしの別れは、ほどなく再会の時を迎え、ぎゅっと引き締まり、白い肌に姿を変えた切り身はポン酢で沐浴したあと、わがお口へ。ング、ングング。皮と身の間のジュルっとしたのがコラーゲンたっぷりのあれですね。もひとついこ。まだまだ、もふたつ、もうみっつ。「身ばっかり食べてんと」。はい、アラもいきます。あー、アラもあらおいし。
和歌山の地酒「羅生門」を持ち込んで、冷でぐびぐび。ちょっと飲んではパクッ。も少し飲んでモグッ。いやー、極楽ごくらく。「あっ、写真撮んの忘れた」。気づいた時には、大皿にはキクナが一片、申し訳なさそうにへばりついてるだけでした。
一夜明けて温泉で肌がしっとり。コラーゲンですべすべ。お嬢方も美貌にいっそう磨きがかかりました(二日酔いでよく見えてません)が、さらに究極の肌艶を求めて、日本三大美人の湯・竜神温泉へ。車で1時間余り。田舎道をくねくね行くのが秘湯らしくていいのかも。山あいの深緑を愛で、渓流のせせらぎに耳を澄ませ、手足を大の字に伸ばしてぼーっと浸かる温泉。体のそこここにあった凝りがすーっと抜け出ていきそうです。至福の時そのものでした。
楽しかった、また行きましょう、というのが社交辞令に終わらないのがすごいところ。そう、12月に一部メンバーを変えてまた行ったんです。今度は7人。やはりなりませぬはなりませぬでしたが、熊野古道を散策してリフレッシュしたり、高原で深呼吸したり。クエ鍋の翌日は、鮎に鯨に鮪、蛸、烏賊、海老、秋刀魚、帆立、牛、ピリ辛ソーセージ、玉蜀黍、じゃがバター、椎茸、ピーマン。食べきれないほどのバーベキューの食材を買い込んでもいともぺろりと平らげ、別腹でソフトクリーム。帰りにめっちゃ安い野菜や果物をいっぱい買って「車で来るとやっぱりええなあ」。
2度あることは3度あります。なりませぬがなりますまで行きますか。ご一緒にどうぞ。
写真撮影:前渕俊朗
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