大阪府立大手前高校昭和50年卒同窓会     学年新聞vol_11  
このプルダウンメニュー から 直接目的のページへジャンプできます  

戻る

vol_11_01    <ウイスキーの島>  夏山 真也 

英国北部のスコットランドは、人口約500万人の小国です。2000年以上の古い歴史と豊かな自然にはぐぐまれた風土には、毎年イギリスのみならずヨーロッパ各地から多くの観光客が訪れます。民族衣装のキルト(スカート風の男性の腰巻)、ファミリーを示すタータンチェック、サーモンを始めとする海川の幸など、スコットランドには独自の文化と産物が多数あります。スコッチウイスキーもその一つです。バランタイン・シーバス・ジョニ−ウォーカーという著名ブランドは、皆さんご存知でしょう。(ちなみにこの3つはそれぞれのウイスキーの生みの親の人物名です。)では、スコットランドにウイスキーの島があるのは、ご存知でしょうか?今回は大手前の皆さんに、現在赴任中のスコットランドから、ウイスキーの島のご紹介をさせていただきます。

スコットランドの西部には日本の五島列島のように、数々の島が点在しています。緯度で言うと樺太よりも北に位置していますが、暖かい海流のおかげで島々の気温は年間を通じて安定しています。ただ波の荒い大西洋に面しているため、厳しい風雨の日が多く、一日の間にも四季があると言われるほど天候は激しく変化します。農産物作りには適しませんが、厳しい風土ゆえに、スコッチを始めユニークな産物を生み出しています。その島々の一つが、スコットランドの孤島、ウイスキーの島、Islayです。(現地のゲ-ル語読みでアイラ)
   クリックすると大きな画像を表示 アイラ島地図
アイラ島の大きさは小豆島ぐらい。島の端から端まで車で2時間あれば、十分たどり着ける広さです。島には信号は一つもありません。もっとも道がつながっていないので車で島を一周することはできませんが・・・・・。 アイラの人口は約3500人。羊の人口?の方が数倍あります。ウイスキー蒸留の発祥の地のアイルランドからは、一海隔てただけの約50マイル(80キロ程)の距離にあり、スコットランドで最も早くからウイスキー蒸留が行なわれたエリアです。現在でもトップクラスの個性豊かな7つのモルトウイスキー蒸留所が稼動しています。蒸留のライセンスを取得した創業年の古い順に7つの蒸留所を並べてみます。

ボウモア (Bowmore  1779年)
アードベック (Ardbeg  1815年)
ラフロイグ (Laphroaig 1815年)
ラガブリン (Lagavulin 1816年)
カリラ (Coal Ila 1846年)
ブナハ−ベン (Bunnahabhain 1881年)
ブルッフラディッヒ(Bruichladdich 1881年)

ウイスキー好きならたまらない銘柄ばかりでしょう。

アイラの7つの蒸留所はそれぞれが海に面した入り江でウイスキーづくりを行なっています。スコットランド産の二条大麦を使い発芽させ、アイラ産のピート(乾いた泥炭)で乾燥させて麦芽を作ります。麦芽は粉砕され、茶色い仕込み水(アイラのピートを含んだ自然水)と共に木桶の発酵槽で発酵を終え、ポットスチルでの蒸留の工程を経て、スピリッツに生まれ変わります。生まれたての蒸留酒は3年の貯蔵の後、初めてウイスキーと呼ばれます。一人前のシングルモルトに成長するためには10年・20年に渡る熟成を重ねていきます。アイラウイスキーの殆どは、海に面した貯蔵庫で熟成の時を積み重ねます。最も古い蒸留所のBowmore(ボウモア)の場合、海に最も近い貯蔵庫は海抜すれすれの高さで、風の強い波の高い日には貯蔵庫に直接海水が吹きつけます。10年20年と熟成を重ねる中で、アイラの水とピート、海に育てられてアイラ特有のスモーキーフレーバーと潮風の味わいが生まれます。

スコットランド全体で稼動している蒸留所の数が百に満たない中で、西の端の孤島で7つの蒸留所が、今でも元気に稼動していることは、歴史的にも産業的にも稀有なことであり、私を含めたウイスキーファンには、個性豊かなアイラウイスキーの味わいとともに、心と体があったまるようなうれしい事実なんです。

スコッチウイスキーの9割は、モルトウイスキー(大麦から単式蒸留で作る伝統的ウイスキー)とグレーンウイスキー(麦やコーンから連続式蒸留で作る近代的ウイスキー)のブレンドで作られるブレンディッド・ウイスキーですが、島の人たちはもちろんシングルモルト(単一蒸留所産のウイスキー)の大ファンです。アイラの小さな街のどこにも町の人が通うバーがありますが、殆どの人が島の農作物のようにシングルモルトを飲んでいます。島で一番シングルモルトの品揃えが素晴らしいバー、Lochside Innでも、みんなシングルモルトを飲んでいます。何故って、ここの歌手のAngusはBowmoreのStill Man(蒸留担当者)なんですから!

Bowmoreの町にはシーフードで有名なレストランのHourbour Innもあります。ここの名物がアイラの牡蠣。地元の人は牡蠣にウイスキーを垂らして味わいます。アイラを訪れた作家の村上春樹さんは、

「レストランで生牡蠣の皿と一緒にダブルのシングルモルトを注文し、牡蠣の中にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。うーん。いやこれがたまらなくうまい。牡蠣の塩くささと、アイラ・ウイスキーのあの個性的な、海霧のような煙っぽさが口の中でとろりと和合するのだ。どちらかが寄るのではなく、どちらかが受けるのでもなく、そう、まるで伝説のトリスタンとイゾルデのように。それから僕は、殻の中に残った汁とウイスキーの混じったものを、ぐいと飲む。それを儀式のように、6回繰り返す。至福である。人生とはかくも単純なことで、かくも美しく輝くものなのだ。」 と表現されています。"もし僕らの言葉がウイスキーであったなら"より

もうお気づきでしょう。私の勤務先のスコッチウイスキーメイカーの最も大切なシングルモルトがBowmoreなんです。サントリーグループの蒸留所であるBowmoreは、1779年に創業されたIslayで最も古い由緒ある蒸留所であり、バーボン樽の熟成原酒とシェリー樽の熟成原酒によるハーモニーのとれたバランスの際立ったシングルモルトはアイラの女王と呼ばれています。
   クリックすると大きな画像を表示
大手前の同窓会のページを借りて、BowmoreのPRをさせていただきました。皆さん、Bowmoreに少し関心を持っていただけたでしょうか?今度バーを訪れたら、是非カウンターで「アイラのモルトを下さい。できればBowmoreを・・・・」とオーダーしてください。潮風の香りと海の味わいがするはずです。

                     Scotlandより

クリックすると大きな画像を表示

蛇足:BowmoreのWeb( http://www.morrisonbowmore.com )、時間があったら覗いて下さい。 蒸留所長は35歳のアイラ出身の才媛、Iseabail(イシャベル)氏です。機会があれば、アイラを是非訪ねてください。イシャベルと共に心をこめてご案内します。
  


戻る